2038人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺本当は、初音と結婚する時に浅井と縁を切ろうかと思ってたんですよ」
「そうなんですか?」
「はい、実は浅井財閥には跡取りがいないんです」
浅井さんはそう言って脱力した様子でため息をついた。
「俺はたまたまあの家の養子になっただけなのに、気付いたら後継者問題の筆頭にされてて、どんどん自分を見失っていく気がしてました」
「宏光さん…」
「あまり、話すことでもない気はするんですけど、俺碧音以外にもう一人子供が…」
「えっ?」
「いや、あの産まれてすぐ亡くなってしまったというか、亡くなってたというか…」
「それって相手はもしかして…凛さんですか?」
宏光さんは一度此方を確認した後、唇を噛み締めると、私の追求から逃れるように視線を宙に泳がせた。
何故だろう。
こういうときって大体悪い予感は当たる。
男性の気まずそうな表情から、相手を観察して事態を感知しまう女性って結構多いと思う。
でも、素直というべきか、単純というべきか男性は顔に出やすいのだ。
「はめられたんですよ?」
私は流石に、眉を顰めると彼を睨みつけた。
はめられてたって、なんだって愉んだのは事実だ
考えたくなかっただけで、2人がそういう関係なんだと改めて突きつけられた。
最初のコメントを投稿しよう!