2038人が本棚に入れています
本棚に追加
私はあの日、結局何も言葉を返せなかった
でも、2人で書いた婚姻用紙は今は私の手元にある。それから、彼にもう一つ託されたものがあった。
その中身を私は知らない
宏光さんはあの日こう言った。
『これは絶対に中身を確認してはいけません。今から話すことが明るみに出たら、これをなるべく早めに警察に届けて下さい。必ずです。
俺には信じられる人なんて、ほぼいません。でも、あなたは違う。
もし、あの時と同じように天運が俺に味方してくれたなら、その時はあなたと一緒に人生の再スタートを切れたらなと思います。
だから、これはあなたを信じているからこそ、託しておきます。
それから、もし、神尾凛があなたの前に現れたら、彼女には何も知らないフリをして下さい。
彼女が欲しいのは、浅井の後継者、いやその権利に過ぎない。
俺自身には大した興味はないはずですから、安心して下さい』
私は、宏光さんを隣に彼が自分の右手を強く握り締めるのを感じながら、彼らと戦う覚悟を決めた。
最初のコメントを投稿しよう!