告白

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車は30分足らずで浅井の本邸に着いた。 ドラマの中でしか見たことないような大きな門があり、中に進むとモダンな邸宅が現れた。 私は凛さんに言われるがままに、スタジオを出て来たが、実はまだ衣装のままだった。 ワンピースとはいえ多少カジュアルな装いとも言えるが、私の普段着よりは遥かに上質なその服は、まるで今日のために用意された戦闘服のようだった。 宏光さんは身構えていた。 話し合いの席は既に設けられていた。 「さぁ、降りて」 宏光さんと私は凛さんに言われるがままに車内から出た。 すると、そこに凛さんと同じ佇まいを持ちながらも、黒の使用人服に身を包んだ知命かと思われる女性が現れた。 妾腹の子… 私は彼女と対峙した瞬間、それを思い出し再度身震いした。 彼女は使用人らしく、姿勢良くお辞儀すると此方へ向かって来た。 「宏光様おかえりなさいませ。お嬢様もご無沙汰しております」 彼女は深々と二人に頭を下げて、そして無表情のまま数秒私を見つめてから、丁寧に挨拶してくれた。 「佐々木様、本日はお忙しい中、ようこそおいで下さいました。中で当主がお待ちです」 私は人生経験したことのない物々しさと堅苦しさに気疲れを覚えながら、浅井の本邸に足を踏み入れた。 決して歓迎されはしない。招かれざる客人として、応接室に招き入れられた。 「此方で、しばらくお待ち下さい。お飲み物を今ご用意して参ります」 使用人の女性はそう告げると部屋を出て行った。 一応私達が通された客室には、既にお菓子は用意されていたが、誰も手を付ける気配はなかった。 宏光さんは車で再会してから、殆ど笑顔を見せてはくれなかった。 この家の居心地の悪さと、あの徹底した彼の無表情ぶりは、私を精神的に更に追い詰める要因だった。 凛さんも不機嫌そうに対面のソファーに腰掛けたまま、無言を貫いていた。 私はこの状況に不安が募るばかりで、居てもたってもいられなくなる中、じっと耐えるしかなかった。 部屋に掛けられていた壁時計が時を刻む音ばかりがうるさく脳に響いて来て煩わしさを覚え初めた頃。 外から戸を叩く音がした。 「ご準備が整いました。ご案内致します」
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