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宏光はあの日から松濤にある浅井の本邸から出られずに居た。
いや、軟禁と呼ぶにふさわしい状態だった。
苛立ちと焦りから、部屋の中を何度歩き回ったかは分からない。
何度も何度も同じ番号に掛けては、留守番電話サービスな切り替わるたびに発信した電話を切った。
こんなことを繰り返して2時間。
夜の9時を回っていた。
一体、何故電話に出ないんだ?
そうして宏光が見つめるスマホの先にある番号は璋子に繋がっていた。
宏光は、この騒動の発端となる数日前、ある極秘の任務を璋子に託していた。
そして、今日その任務についての報告が来るはずだったが、夕方からずっと待っているにも関わらず、ちっとも連絡がなかった。
「あの、バカ何してるんだ?夕方には連絡するよう確認したのに…はぁ」
今日、何度目か分からない溜息と疲労感で宏光はベッドに腰を下ろした。
浅井のお家騒動に巻き込まれてしまう前に、宏光はある準備を始めていた。
それが、長年浅井ホールディングスがM&Aをオファーして断られ続けていたある企業との事業提携の契約。
宏光は本日、浅井本邸の応接室にて、浅井グループ会長の長次郎と、浅井ホールディングスの社長であり長男にあたる裕一郎夫妻、浅井電子の取締り役兼事業本部長である次男の隆文夫妻、長女の咲穂、次女眞澄と共に家族会議を行った。
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