告白

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「以上で、報告終わらせていただきます」 内田がそう言って、報告を終えると着席した。 少し間を置いて、進行の山本が次の議題へと話を進めた。 「では、本日二つ目の議題に入らせていただきます。以前より、業績不振により事業の再編を考えております浅井電子について、宏光さんよりお話をお願いします」 「はい」 宏光は手元にあった資料を手に立ち上がった。 その場に居た人間の視線がいっせいに宏光に向く。 「今回浅井電子とのM&Aについて、九州にある司エレクトロンとお話を進めさせていただいております。先月半ばに、彼方と対面で交渉し、調整を進めさせていただきました。契約内容は以下の通りで、本日私の部下が先方と契約確認を行う予定です」 「司エレクトロン、以前買収に失敗してなかったか?」 「あの会社は、今創業者は退いていて経営基盤がぐらついてるんじゃなかったけ?うちが前回話を持ちかけた後の話だが、上場している会社でも無かったし、九州となると色々事業を統合するのに時間かかるんじゃないのかな?」 口々に不満や不安を述べる一族の面々を前に宏光は、彼らの話を遮るように再び話を始めた。 そう、宏光がこのM&Aを進めたい目的は、実はもう一つあった。 「M&Aを進めるにあたって、実は先方からある条件をいただきました」 「条件?」 浅井家の長男、裕一郎が訝しむような顔で宏光を凝視してきた。 「はい」 宏光は相手を見ないように視線を上げたまま返事をした。 浅井の一族、いやその場に居た誰もが宏光の次の言葉を待っていた。
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