告白

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「実は私、現在創業者一族の孫娘にあたる方と交際しておりまして、その方と再婚を考えております。このご縁をきっかけに、買収という形ではなく、資本提携であるなら応じても良いということでした」 「買収と資本提携じゃ、そもそも話が違ってくる。こいつに任せたのは間違いだったんじゃないんですか?」 呆れた様子で次男の隆文が宏光を糾弾する。 「親父、これはどういうことですか?今ここで買収出来なかったら、浅井グループ全体の趨勢にも大きく関わりますよ。中堅とはいえ、司エレクトロンを買収する財力や経営手腕を、経済界に示すことは、後の繁栄にもつながるわけですからね。何故こんな大事な案件、宏光なんかに任せたんです!!」 長男の裕一郎夫妻も立腹した様子で長次郎へと鋭い視線を投げかけては、ひどく宏光を罵った。 「ねぇ、買収が目的なのか、事業再編が目的なのか?それが一番大事なんじゃない?大体、うちが電子事業に乗り出した当時は、兄さん達は反対していらっしゃいましたよね?」 次女の眞澄が甲高い声で隆文達に反論する。 「せっかくの新事業とはいえ、立ち行かなくなるくらいなら、事業自体の在り方に問題があるんじゃないの?」 あー、この家の一番醜い側面が顔を見せ始めた。 そもそも浅井を継いだ長男や次男と浅井を出た長女や次女の関係性はそれほど良くはなく、なんだかんだ、彼らは仲違いを繰り返しているように見えた。 宏光はそんなやり取りを何十回と見てきたことで、この家の最大の問題は、むしろ内部抗争によって事業存続の是非が別れてしまうことにあると見ていた。 そんな彼らを前に、長次郎は咳払いをすると、周りをぐるっと見回し厳かに話始めた。
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