告白

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浅井家のお家騒動に巻き込まれて、宏光さんと会えない日々が数日。 仕事はモデルを度々しながら、主にR-emotionの編集アシスタントや雑務をしていた。 ありがたいことに、プロモーションが成功したおかげで、売り上げがそれなりによく、赤西さんは大喜びだった。 発売された雑誌も、それなりに高評価をいただけたこと、派遣をやっていたことやモデルで自信を失ってしまった時期があったことなど、悩みについて語った記事がアラサー女性から多く支持されたことで、良ければサイトのブログを書いてみないかと社長からは提案された。 数ヶ月前では考えられないような、充実した日々を過ごす中、気掛かりなのは宏光さんとのことくらいに思えた。 だが、もう一つ気になることが増えた。 今日は久しぶりに大学時代の仲間で会うことになっていたのだが、私には少しだけ緊張する出来事があった。 初彼が久しぶりに日本に帰国するらしく、彼が来るというのだ。 連絡が来たのは1週間程前だった。 仲の良かった灯里からいきなり電話が来たのだ。 ーーーー 「坂井くんが返って来るんだけど、こないだ個人的に連絡貰って、若菜連れてきて貰えないかって」 「なんで?」 「なんか話したいことがあるみたいで…どうしてもって感じだったんだよね」 「そうなんだ」 「来週の週末で急なんだけど、金曜日の7時って来れそう?」 「うん、夜なら大体暇だよ」 「じゃあ、悪いんだけど渋谷の新南の改札口に7時待ち合わせでいいかな?」 「大丈夫。ありがとう」 ーーーーー もうすぐ約束の7時だった。 私が指定された待ち合わせ場所に行くと、まだ灯里はいなかった。 でも、その場所で、一際目立つ濃紺のコートを羽織ったスーツ姿の男性はすぐに目に入った。 あれ、坂井くんだ! 私はちょっと距離を保ちつつも、彼に声を掛けようか戸惑っていると、スマホのバイブが急に震え出した。 「もしもし?」 「若菜ごめんね、私今日ちょっと仕事残業になっちゃって、坂井くん先にいると思うから2人で先にお店行っといて。幹事は私がしてるからみんな半くらいには来ると思う」 「ちょっと、無理だよ…灯里?!」 「ごめん、じゃあ今片付けあるから後でね」 灯里はそう告げると、私の返事を待たずに電話を切った。 電話を切られた彼がいる方へと渋々向かうと向こうが気付いた様子で手で合図を送って来た。
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