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「もういいよ。私気にしてないから、あれは仕方なかったもん。全然デートだって行けてなかったしね」
まぁ、殆ど自然消滅したようなもんだったし、今更責めるつもりないし、坂井くんだって寂しい思いもしてたんだろう。
「あのさ、今日、この後もう一軒だけ付き合って貰えないかな?」
「うん…いいよ」
「ほんと?!」
私が頷くと、坂井くんは小さくガッツポーズをして見せた。
相変わらず笑顔が素敵でつられて自分まで笑顔になっていた。
私もちょっとだけ、あの頃のことも謝りたいし、話も聞いてみたかった。
もう、戻れないのは分かってるけど、苦い初恋の思い出と共に、少ししか一緒に居られなかったのに、楽しかった頃の記憶が蘇ってきたのだ。
ちょっとだけ、大人になった今の私達なら、冷静に当時を振り返ることも出来るんじゃないか、彼の笑顔を見るとそんな期待を抱いてしまった。
お店には5分くらいで着いた。
感じの良い和風の町屋っぽい内装で居酒屋さんというか、隠れ家のレストランといった雰囲気だった。
玄関から渡り廊下を通って店内を進むと、中はランプや木製の和棚が並べられているモダンな造りで、右側にバーカウンターがあった。
随分と灯里はお洒落なお店予約したんだなと思っていると、スタッフさんが来て私達を予約の席へと案内してくれた。
私と坂井くんはその後、みんなが来るまで、しばらくは近況や仕事の話をしてやり過ごしていた。
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