告白

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碧音くんが帰ってからも宏光さんはずっと眠ったままだった。 私は若干疲れもあったが、洗い物は先に済ませた。 宏光さんはその間、たまに寝息が聞こえて来ることはあったが、目を覚ますことはなかった。 私は洗い物を終え、最後にもう一度テーブルを拭こうと戻った。 すると、宏光さんの目元からうっすら涙が流れるのが見えた。 私は見なかったことにして、テーブルの上をもう一度片付けていると、宏光さんが何か呟いた。 「…んなに言ったのに…」 私は気になって、宏光さんに近寄った。 「もう居なくなるなんて…許さないよ」 彼はそう言うと、私に抱きついてきた。 モウイナクナルナンテ… 私の脳ではその言葉ばかりが、クルクルと回っていた 「初音、愛してる」 宏光さんはそう言って私を抱き抱えると、ソファーへと連れて行き、思いっきり口付けた。 私じゃない誰かを愛しそうに見つめると、想像出来ないほど甘く、丁寧に私を脱がせ始めた。 いつもならアイマスクは必須なのに、今日は私が誰かなんて彼は気にも留めない様子だった。 両手で頭を抱えると、これまでにない程に熱く唇を奪うと、躊躇うこともなく舌を押し入れて、唾液もろとも私を貪ろうとした。 そして、あっという間に彼の手はブラごと胸を押しつぶし、敏感なその先っちょを弄るように指を擦り合わせた。 「初音、今日はいつもより敏感なのかな?」 私は奥さんじゃありませんーーー 私が泣くのを堪えて、首を横に振ると、今度は私が着ていたニットを捲りあげて、両胸を愛撫するように舌を這わせた。 「あれ、胸こんな大きかったけ?まぁ、なんでもいいか」 よくありません!! 「なんでそんな不満そうな顔するの?俺、いつも愛してるってあんなに言ってるのに…」 「ち、違います」 「何が?」 「私は、ち、違うんです…」 私は自分の名前を言えないまま、涙目で彼に訴えた。 でも、彼は一向に夢から醒める気配はなかった。私はその後も、彼が自分の名を呼ぶことなく、一方的に行為に及ぶのを受け入れてしまっていた。 突き飛ばしてやりたい そう頭の片側では考えるのに、もう片側では、もう少しだけ夢でもいいから彼の本気の愛撫を味わっていたい。 心も身体も犯され続ける快感と拒絶でどうにかなってしまいそうだった。 だって、宏光さんは彼女の名前を呼ぶだけであんなにすんなり自身を押し挿れられるなんて… 私は信じたくはなかった。 その晩、私はこれまでにない程愛しさと甘さで躰がますます彼に溺れていく快感を覚えながら、心の奥底に何か大切なものを沈めてしまった。 「あいつにさ、そろそろ兄妹作ってやりたいなぁって思ってた。出来れば女の子がいいなぁ」 彼は果てる瞬間にそんなことをほざいて深い眠りに落ちていった。
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