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あの日から、身体が熱い
でも、心は冷たくなった。
だって、あんな抱かれ方、嫌で嫌でたまらないはずなのに、朝起きた宏光さんは覚えていないどころか、幸せな夢を見たってそう話してきたのだから。
もう、呆れて何も言えなくなった。
服なんて着せ直さなきゃ良かった。
私がトイレの洗面台を前に、立ちすくんでいると、背後から誰か入って来た。
「すみません」
私が邪魔になると思ってどこうとすると、振り向いた先に居たのは灯里だった。
何故か灯里は目尻に涙を潤ませていた。
「もぉ、いつも若菜明るく振る舞うから気付かなかったけど、そんな思い詰めてたなんて知らなかったよ〜」
灯里はガバッと私に抱きつくと、思いっきり身体を左右に揺らした。
「もう10年近く友達なんだから、なんでも話してくれて良かったのに」
「ごめんね…」
「ねぇ、その経営者ってどんな人なの?」
「あぁ…」
宏光さんって調べればすぐに出て来る分、なんかあの悪い噂まで知られたら厄介な気もする。
彼との関係って正式に結婚しない以上言えない。
身内に程言えない…
「ねぇ、まさかと思うけどさ…お金欲しさに身体の関係持っちゃったの?」
私は何も言えなかった。
宏光さんと恋愛ってちゃんと言える関係なのか、それが私にも分からなくなってしまっていた。
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