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黙ったままの私を見て灯里は再び言った。
「私も何もかも順調ではないけどね…」
「どうして?」
「こないだ生理不順ひどくて病院行ったら、子供考えるなら早めに考えた方がいいって」
「なんか病気?」
「ううん。ただ、体質的に内膜症というか生理不順お越しやすいから、あまり妊娠しやすいとは言えないだろうからって」
灯里はそう言うとため息を吐いた。
「人生なかなか思うように行かないよね。彼氏だって欲しい時に出来るわけでもないし、子供のことまで考える余裕なんてないよね」
「ほんと、29なんてもういい大人扱いされちゃう年齢だけど、自分の人生決断するにはまだ若いんじゃ無いかってどっかで思ってた。でも、もうそんな若さのままに楽しめる時期でもないんだろうね」
私は頷いた。
「私もいつまでも中途半端な関係って良く無いのかなって頭では分かってるんだけど…」
「相手のこと好きなの?」
好きか…
シンプルに聞かれてしまうと、今は答えられない自分がいた。
彼の笑顔も抱きしめられる腕の中にも、私という存在はいないんじゃ無いかって…
宏光さんにとって、形だけの愛する人にはなれても、心から愛する人になれる自信がなかった。
「あのさ…こんなこと言うのどうかと思うけど、もし坂井くんにその気があるなら、乗り換えてみたら?」
「えっ?」
「私、二人お似合いだと思うよ」
私は灯里が躊躇いもなくそう口にした瞬間、耳まで真っ赤に染まる自分の顔を鏡の中に見た。
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