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「スマホ、忘れたの?取りに帰る?」
「ううん」
坂井くんは察しが良かった。
ちょっと照れ臭そうに苦笑いすると、向こうから灯里の声が響いて来た。
「じゃあ、後は坂井くんよろしくねー。先に帰るねー」
灯里は手を大きく振ると、両脇にいた二人も小さく手を振って私達を見送ってくれた。
「さて、どうする?」
「いいお店知ってるの?」
「あんまり日本に居なかったから、そう詳しくはないけど、以前一度だけ行ったことあるバーが感じ良くて、そこにする?」
「うん」
私が頷くと、坂井くんはスマホを取り出してお店を検索し始めた。
「ここからそう遠くはないけど、タクシー乗るか?」
「どっちでもいいよ」
坂井くんは私にそう尋ねては来たが、手を握るとタクシーを捕まえようと、大通りに向かった。
「せっかく2人の時間、ゆっくり過ごしたいからタクシー乗ろ?」
「そうだね」
私もそう同意すると、坂井くんは運良くすぐに来たタクシーを停めた。
彼に先に乗車するように促されて、乗り込みと、久しぶりにのるタクシーの臭いに鼻が刺激された。
タクシーなんて乗るの何年ぶりだろう。
走り始めたタクシーの中から見える東京の夜景は、普段のそれとは少し違って見えた。
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