プロポーズ

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宏光は言われた通り階段を上って2階に向かうと、突き当たりに資材庫のような部屋があった。 その手前は広々としたスペースがあり、左側に窓と小さなキッチンが配置されていた。更に部屋の真ん中にはテーブルが設置されていて、キッチンの反対側にはデザインのために使うのか画材やそれにまつわる備品やトルソー。小さめのソファーが設置されていた。 いかにもデザイナーの仕事部屋といった感じの2階は掃除には疎いのか、ちょっと埃っぽい雰囲気ではあった。 宏光は窓を開けると、まず部屋を換気した。心地よい夜風が部屋を冷やした。 宏光がここに来たのは久しぶりだった。 だが、勝手知ったる親族のサロン。冷蔵庫を見つけると中の扉を開けてみた。 下の段には炭酸水とドリンク数種類。他には栄養ドリンクやゼリーが入っていて、上の段にはサンドイッチと唐揚げが透明のパックに入った状態で入れられていた。 パックにはメモが貼ってあった。 『佑介へ 毎日仕事お疲れ様。今日も帰り遅いのかな?軽食作ったから食べてね』 宏光は中から炭酸水を一本取り出すと、その瓶を片手にキッチンに向かった。栓抜きで蓋を開けると、瓶ごと喉にそれを流し込んだ。 強炭酸なのか刺激の強いそれは一気には飲めなかった。だが、ライムの香りが喉に程よい爽やかさを感じさせるため飲みやすい味にはなっていた。 宏光がキッチンの流し台で炭酸水を煽っていると、背後から階段を登ってくる音が聞こえた。 「あ、それ俺のお気に入りなのに」 「ごめん。美味しいな、これ」 「いいけどさ。そういや、さっきが友紀が持ってきたコレ食べる?」 「愛されてんな、羨ましい」 宏光は、ちょっとだけ冷やかすような口調で返した。 「お前もそろそろ誰か見つけたら?」 淡々とした様子で佑月はそれをかわした。 宏光は意外そうに彼を見つめると、首を横に振った。
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