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宏光と凛はその一晩以降
互いに求め合うことを覚えてしまった。
親達の思惑に踊らされている
そう頭では分かっていても、凛が自分の存在や肉体を受け入れてくれるその快感や安心は
この世界を生きる上で孤独や苦労の多かった宏光にとって
この上なく愛しく得難い幸福だった。
凛という少女の持つ女性の輝きは
やはりというか凄まじいものがあった。
最初は激しく抱き合うカップルらしい初々しさにも慣れてしまって、互いの肉体を貪る欲求を持ち始めていた。
だが、互いの心境や境遇の変化が、演技の上で評価され始めたのは、もとい、凛は女優として名を上げるようになり始めた。
学祭の劇も拍手喝采の中、幕を閉じた。
だが、この成功は必ずしも2人の恋を幸せに導くものにはならなかった。
次第に会える時間は減っていった。
女優としての仕事と学業の両立。
宏光が将来を見据えながらも、彼女との関係に苛立ちや不安を抱えてしまうようになったのは考えるまでもなかった。
互いにとって苦しいばかりの恋愛へとそれは変貌していた。
明らかに成績が落ち始めた宏光に、浅井家は勿論学校からも、不安や不満を耳にするようになった宏光は、ちょっとずつ以前のような純粋さを失い始めていた。
凛も勿論、それには気付いていたし、自分自身も家を背負う重さと、彼が自分に傾ける煩わしい束縛的な欲求とを天秤にかけてしまい、距離を置きたいと考えるほどになっていた。
凛と宏光。
仕組まれた二人の出逢いの裏で、色んな人の思惑や、将来への道筋に暗雲が立ち塞がる中、互いの身体に宿した情熱的な愛を交わし続けた結果。
凛はその身に愛しき光を宿してしまった。
彼女が17歳になったばかり、冬に差し掛かる前だった。
宏光は大学受験を目前に控えていた。
彼女は声を枯らし、食事も水もまともに取れないほどに酷く窶れた。
彼女の商品価値は既に億に届き始めていた。
貴之は娘より女優としての才能に重きを置いた。
若い少女に将来を決める意思など、周囲の欲に飢えた大人達には与えるわけがなかった。
彼がその事実を知ったのは、彼が第一志望の大学に合格した後だった。
彼らの恋はこれによって、あっけなく自滅した。
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