初デート

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そんな私の前に現れた、経営者の浅井さん。 もう非現実とも呼べるその存在と今目の前にいる高野さん。 比べるわけじゃないけど、より現実的に人生を導いてくれそうなのは、此方なんじゃないかと私は経験則で思ってしまうのだ。 「あ、ありましたよ。佐々木さん、ここですね。駅からはちょっと離れますが歩いて10分かからないくらいだと思います」 「あー、なるほど」 「何かご不満でも?」 「いいえ…」 いや、不満ならある。外観からして事務所くらいのスペースしかなくて、やってるのは測量や設計。規模は事務所と言っても過言ではない。 それがダメとは言わないけれど、会社って感じの規模ではないのに、やたらとオススメされるのが事務所の事務だ。 贅沢は言えない。でも、職場環境が良くて出来れば家から違い場所を指定すると、彼はこういう感じの事務所や町工場をすすめる。 大手の案件は若い人や条件の良い人が沢山登録してるから、担当者の実績になりやすい中小企業を紹介して貰えたらいい方だとは思う。 でも、彼はなかなかいい企業を出し渋るのは、前回もそうだった。 「あなたが欲しいのって、こうみんなで和気藹々した感じのアットホームな職場だと思うんですよね。その人間関係のしがらみとかあまりなくて、家から近い。でも、都内と言えどもこの地区にそんないい会社少ないに決まってますよ?もうちょっと、条件変えるなら違う会社も候補に出てきますよ。後、夜勤やシフト勤務ここが嫌じゃなければね、システム系の会社でいいところあるんですけどね。夜勤はもう嫌なんですよね?」 「はい」 システム系は、あの人みたいなタイプがまたいるかも知れない。事務所の人間関係って地域や年齢的なバラつきが少ないからか、ちょっと毛色の違う人間に対して慣れるまでは警戒心が強いように思う。 もうちょっとドライなところで働きたいだけなのに。 正社員は人間関係が上手くない自分には夢の又は夢だ。嫌になったら辞める、それを繰り返してしまった私にはもう一つの会社で長く働き続ける自信がないのかも知れない。 早く仕事を見つけないとと焦る気持ちと、いや、どうせそんないい求人ないよねと冷めてしまう気持ち。 この2か月頑張ってみたものの、自分で採用に辿りつくことさえ出来ない自分に、期待はもうなかった
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