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パーティーのメインホールには歌劇の舞台演出にも使われそうな豪華な大階段が中央に配置されていた。
そして、天井には何とも煌びやかでゴージャスなシャンデリアが吊り下がっていた。
以前、婚活をしていた頃に一度だけ似たようなゲストハウスのパーティーに参加したことがあるが、規模や参加人数が桁違いで、ちらほら著名人や芸能人、スポーツ選手や名を聞いたことのある経済評論家や経営者、文学人なども見られた。
「凄い…」
私は思わず場違いな場所に来てしまい、驚きと戸惑いを隠せずにいると、宏光さんに肩をポンと優しく叩かれた。
「緊張してますか?」
「はい…それはもう」
宏光さんは素直に答えた私ににっこりと微笑見返してくれた。
「正直ですね、若菜さんは。でも、実は僕も緊張しています」
「そうなんですか?」
「えぇ、とっても緊張していますよ。今日は特にね」
「こういう場所は慣れていらっしゃるのかと」
私がそう耳打ちすると、宏光さんは首を小さく振った。
「そんな慣れてるわけないじゃないですか。
まぁ腕が痛むおかげで緊張より、そちらに気をとられている感じはありますけどね」
「痛むんですか?」
宏光さんは首を頷かせると、苦しそうに顔を歪めた。
私はそんな宏光さんを心配そうに見つめると彼に問いかけた。
「痛み止め飲まなかったんですか?」
「ちゃんと飲みましたよ」
「そもそも、何でそんな馬鹿なことしたんですか?皆が心配するのは承知でしたよね?」
「すみません…」
宏光さんは罰悪そうに俯くと誤った。
腕の火傷は思ったほど重度ではなかった。だが、やはり火傷跡は遺ってしまうし、普段の生活に暫く支障は出てしまっていた。
それに、宏光さんが思うより心に傷を抱えてしまったことが気掛かりだった。
全てが終わって穏やかに結婚という運びになって、どこか嬉しいと思う気持ちと裏腹にもう以前のように、私は宏光さんと前向きな関係を築ける自信を無くしてしまっていた。
どこかお互い上の空のまま、仮の婚約者を演じているに過ぎなかった。
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