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私が渋い顔で納得出来ずにいると、彼はちょっと躊躇った様子ではあったが、ある会社の求人を見せてくれた。
「ここ、家から近いって条件は外れますが、いい会社ですよ」
私は画面に表示された求人情報に見入った。
「映像制作ですか?」
「ここは昔からの知り合いが立ち上げて3年程度なんですが、サポートスタッフ募集してるらしくて出来れば大手で事務経験のある女性がいいって言ってたんですよね。まぁうちの扱ってる案件というよりは個人的なツテで紹介って形なんですけどね」
「どうしてそんな仕事を私に?」
「だってあなたウチの持ってる案件じゃそう満足しないわけでしょ?」
「ははは…いやまだ悩んでるだけで」
図星だった。私は多分同じような案件ばかり紹介されてしまうことにちょっとつまらなくなってしまっていた。
それが贅沢なことだとは分かってる。
でも、少しだけ新しいことがしたい時はある。
そう少しだけだ。私は後少し夢が見れたらいいのだから。
頭の中ではちょっと寂しそうな浅井さんが此方を睨んでいたけど、私は高野さんに返事した。
「そちら、是非受けさせていただきたいです」
彼はニヤリと笑うと、分かりました。ちょっと向こうに連絡して確認してきますねと席を離れた。
夕方近くなってきたカフェは人が増え始めたのかちょっと賑わっていた。
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