契約と愛の間で

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私と千暎さんは再びパーティー会場へと戻った。 千暎さんが度々、ゲスト達から声を掛けられている脇で、私は会釈程度の挨拶をすると黙っているだけだった。 こんなにつまらない時間もあまりないんだろうと、ぼんやりと入り口の方を眺めていると、気になる人影を見つけた。 私は千暎さんから離れ、その人物の後を追いかけた。 あれは、まさか… 私がパーティー会場から飛び出して、玄関周辺の庭口でキョロキョロとあたりを見回していると、背後から声を掛けられた。 「佐々木!!」 私は威勢よく名前を呼ばれて、思わずびっくりして振り返ると、そこには中野さんがいた。 「あ、中野さん」 私がそう呟くように返事するのと裏腹に、彼は顰めっ面で、パーティーには似つかわしくないパーカー姿で、物々しい雰囲気を放ちそこに立っていた。 「まずいことになった」 彼は両手で頭を抱え込むと、その場で俯いた。 「何かあったんですか?」 「凛見なかった?」 私が彼に近寄ると、小さな声で彼が尋ねて来た。 「今さっき、その辺りを…」 「佐々木、逃げろ!!ここにいちゃダメだ。パーティー中止するように俺が頼むから、お前はひとまずここを出ろ!!」 「ちょっと待って下さい!凛さんに何かあったんですか…」 中野さんは怯えた様子で、私を見つめるとガバッと抱きついて来た。 「ダメだ…ダメだ。俺は兄貴もお前も失いたくない。あいつは…あいつは…」 「中野さん!落ち着いて下さい。何があったんですか?」 恐怖と絶望に染まっていく中野さんを見て私は察してしまった。 まさか、凛さんは… 私は不安いっぱいな気持ちと焦りで、パーティー会場を見つめた。 「宏光さん…」 パーティー会場へ戻ろうとした私を抱きすくめるように、中野さんは私の行手を阻んだ 「ダメだ。行っちゃダメだ」
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