2026人が本棚に入れています
本棚に追加
私と千暎さんは再びパーティー会場へと戻った。
千暎さんが度々、ゲスト達から声を掛けられている脇で、私は会釈程度の挨拶をすると黙っているだけだった。
こんなにつまらない時間もあまりないんだろうと、ぼんやりと入り口の方を眺めていると、気になる人影を見つけた。
私は千暎さんから離れ、その人物の後を追いかけた。
あれは、まさか…
私がパーティー会場から飛び出して、玄関周辺の庭口でキョロキョロとあたりを見回していると、背後から声を掛けられた。
「佐々木!!」
私は威勢よく名前を呼ばれて、思わずびっくりして振り返ると、そこには中野さんがいた。
「あ、中野さん」
私がそう呟くように返事するのと裏腹に、彼は顰めっ面で、パーティーには似つかわしくないパーカー姿で、物々しい雰囲気を放ちそこに立っていた。
「まずいことになった」
彼は両手で頭を抱え込むと、その場で俯いた。
「何かあったんですか?」
「凛見なかった?」
私が彼に近寄ると、小さな声で彼が尋ねて来た。
「今さっき、その辺りを…」
「佐々木、逃げろ!!ここにいちゃダメだ。パーティー中止するように俺が頼むから、お前はひとまずここを出ろ!!」
「ちょっと待って下さい!凛さんに何かあったんですか…」
中野さんは怯えた様子で、私を見つめるとガバッと抱きついて来た。
「ダメだ…ダメだ。俺は兄貴もお前も失いたくない。あいつは…あいつは…」
「中野さん!落ち着いて下さい。何があったんですか?」
恐怖と絶望に染まっていく中野さんを見て私は察してしまった。
まさか、凛さんは…
私は不安いっぱいな気持ちと焦りで、パーティー会場を見つめた。
「宏光さん…」
パーティー会場へ戻ろうとした私を抱きすくめるように、中野さんは私の行手を阻んだ
「ダメだ。行っちゃダメだ」
最初のコメントを投稿しよう!