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「中野さん、凛さん追いかけて来たんですか?」
私が尋ねると彼は頷いた。
その時、私は彼と再会した時に抱いた違和感に気付いた。
中野さんと浅井さんって…
もしかして
私がその面影に二人の重なりを感じていると…あちらも何かを感じ取った様子で尋ねて来た。
「お前ってさ、宏光と付き合ってるんだっけ?」
私は頷いた。
「あなたは、知ってて私に近付いたんですか?」
彼は少し渋そうな表情で俯いたが、深く息を吸うと此方をじっと見つめて話始めた。
「俺、最初は兄貴の周囲偵察する目的でモデルの仕事始めたんだけど、思った以上に人気になっちゃってさ。モデルは仮でやってて、本当はカメラマンやりたかったからさ、今の仕事に転職したんだよ。それで偶然佐々木と再会した。だから、最初はまさか兄貴とあんたが恋仲なんて知らなくてさ。それで、それを知った凛が暴走し始めて、でも、その裏で兄貴が自力であの事件の闇暴いちゃったみてーでさ、親父さん逮捕されたからか、ますます凛自暴自棄になっちまってて…それで、マンションから身投げようとしたから抱き留めたんだけど…ごめん、ほんとごめん」
中野さんは涙ぐみながらそう言うと、震えながら私の手首を固く握りしめた。
「そうだったんですね。でも、大丈夫ですよ。中野さん、あなただって宏光さんと凛さんとの間で揺れて悩んで傷ついて来たんでしょう?もう十分苦しんだんですよ。だから、この手離して下さい」
私が彼の握りしめた指に手をかけて解こうとすると、彼は俯き首を激しく横に振った。
「今行かないと、宏光さん達が…」
「分かってる…でも、俺佐々木を失うのも怖いんだ…」
「えっ!?」
私は予想だにしなかった彼の告白に、思わず目を丸くして驚いていると…
彼にガバっと抱きすくめられた。
「あの、ちょっと…」
「あれはあいつらの問題であって、俺らには解決出来ない。兄貴だってとっくに気付いてたはずだ。凛に背中を向けて生き続ける息苦しさに…」
「それは…」
「だから、最後は2人で決着着けるしかないんだよ。お前や俺の出る幕じゃないよ!だから、ここにいろ!!なっ?」
中野さんはぎゅっと私を大事そうに抱きしめると力強くそう念押しした。
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