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会場に私の声が響き渡ると、ゲスト達が一斉にざわつき始めた。
早く、早くしないと宏光さんも凛さんも…
私が脳裏に最悪な展開を思い描きながら、祈るようにしてそちらへ向かっていると、ステージの中央にその人物はやって来てた。
「あなた、誰なんですか?ステージから降りて下さい」
司会の人が警戒しながらも、その人物に注意しようと近付いた。
すると、その背後から宏光さんは彼の腕を掴むと下がるように注意を促した。
「下がって下さい。俺がなんとかします」
司会の男性は宏光の言葉に一瞬驚きを見せたが、皆が騒然として逃げ惑う異様な状況を前に気もそぞろになっていたのだろう。ステージから慌てて降りていった。
宏光さんはそんな彼を見送ると、自分はステージ中央へと向かった。
「誰だ?何のためにこんなことをする?」
宏光さんは相手と対峙すると、怯むことなく尋ねた。
相手はそんな宏光さんに対して真正面から向き合うと、ナイフを突き出した。
ヤバい!!
間に合わななかった。
私はステージにあともう一歩というところで、戸惑い逃げ出す人々の波に押し返しされてしまった。
あと一歩だったのに、必死に人の波に抵抗しようともがくが、彼らの姿はあまり見えなかった。
あぁ、このまま、何も出来ずに終わってしまうのか…
私が必死に前進するのを阻止するように、立ちはだかる人波で、視界から二人の姿は遠ざかっていった。
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