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「ち、違います」
「えぇ、分かってます。襲うつもりじゃなかったことくらい」
な、何を言うのよ、この人!!
私は思いっきり睨みつけると、浅井さんは真顔に戻って淡々とした表情で尋ねてきた。
「いい仕事見つかりましたか?」
「そ、そうですね。はい、次面接の予定です」
「どんな仕事?」
「あなたに関係あります?」
「ないけど、此方断るなら教えて下さってもいいんじゃないですか?事務ですか?」
彼はそう言うと私ににじりよって凄んだ。
「映像制作の会社です」
私はその気迫に負けて、口を割ってしまった。そして、玄関から、いや彼から少し離れた。
「なんて会社?」
「そんなのまで教える必要ありますか?もう、帰って下さい」
私はそう強めに言うと、彼はちょっと切なそうに眉を顰めて呟いた。
「心配なんですよ」
「え?」
「あなたが心配なだけです…まぁ、あなたの人生ですから僕にはどうも出来ないですけどね」
彼はそう言うと、お邪魔しましたと言って玄関を出ようとした。
私はそんな彼の腕を思わず掴んだ。
「あの、あなたと私はあの日以前にどこかで知り合ってますか?」
彼は一瞬固まったように見えた。そして、その場をじっと動かなかった。だが、暫くすると首を横に振って答えた。
「いいえ。ちょっと気になることがあっただけです」
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