初デート

12/45

2022人が本棚に入れています
本棚に追加
/295ページ
私は面接が始まるまで、会社の近くの駅があるカフェで時間を潰していた。 紹介して貰ったR emotionは正社員10人。従業員25人未満の小さな会社だった。社長は元はアパレルの関係者だったらしいが、アパレル広告で培ったデジタル技術を駆使して立ち上げたネット通販や動画サービス、プロモーション映像を主流に急成長していると聞いた。 デザイナーやブランドが作品を発表する場をネット上に設けて、なおかつデザイナーとユーザーが相互にやり取り出来る場を作りたかったという。デザイナーが自分の作った作品へのこだわりや実際の制作工程などを動画として配信する。それを一つのプロモーションとして、ユーザーからの評価を目に見える形にすることで、マーケティングに利用しようというものらしい。 アパレル産業は今や斜陽産業として店舗運営は厳しい時代だが、ネットにはまだまだ市場を切り拓ける可能性はある。尚、現在のユーザーは個人のニーズに敏感で、店舗でブランド側の提供する商品より、自分の特性にあったファッションを求めることが増えた。 その場合生産数の少ないオリジナル作家などは、自らが販売するのもをプロモーションしたり営業したりする場を、大手ブランドの店舗からネット市場に切り替えた方が都合が良かったりするのだ。 サイズも色使いもデザインも自由にカスタマイズ出来る、オリジナルブランドが輝くためには作家本人の意志と情熱を損なわない市場が必要だと彼は考えた。 そして、作られたのがR emotion 今や人気の動画配信サービスとして利用者が急上昇しているmy funs 。自分がデザイナー登録することもユーザーとして登録もできて、大手ブランドとのコラボや動画企画に公募することで知名度をあげることも可能だと、若い世代のデザイナーやファッションに敏感な層にウケているらしい。 その動画制作や企画のアシスタント職。 それが高野さんが私に紹介してくれた仕事だった。 風貌に反してまともに仕事してくれて、高野さんには感謝しかなかった。
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2022人が本棚に入れています
本棚に追加