2024人が本棚に入れています
本棚に追加
/295ページ
とりあえず、今日はニラがあるから、ニラと卵であんかけを作ってニラ玉丼にでもしようと、洋服をハンガーラックに戻したところ、スマホが鳴った。
『非通知』からだった。
「はい」
私は明るめのトーンで電話に出た。
「夜分に失礼します。私BLEACH &MEETINGで秘書を担当しております。久野璋子(アキコ)と申します」
「はい」
面接の会社じゃなかった。私は一気に声のトーンを下げてしまった。
「明日のご予定に関しまして、社長の方から確認するよう申し付けられまして、お電話させていただきました。今お時間よろしいでしょうか?」
「はい」
「明日は午後5時にご自宅にお迎えにあがりますので、自宅のエントランス前にその時間になりましたら、お越し下さい。その後のご予定につきましては当日車内で確認させていただきます」
「あの、それってデートですか?」
私は自分でもなんて頓珍漢なことを聞いているのかと思ったが、確認しておきたかった。
「そうですね。そうだと思います」
久野さんは淡々と答えた。
「じゃあ、オシャレしなきゃまずいですよね?」
「あ、お召し物に関しましては此方でご用意させていただきますので結構です」
「どういうことですか?」
「社長からはそのように伺っております。お支払いに関しましても此方で持ちますので、どうぞ気を楽にお越し下さいとのことです」
デート代は確かに払える状態にはないけど、流石社長、自腹で全部やってくれるわけか。
そう考えていると、私のお腹がぐぅと鳴った。
「大丈夫ですか?」
私が返事出来ずにいると、彼女が電話の向こうで心配そうに声を震わせた。
「大丈夫です。明日はよろしくお願いします」
私は勢いでそう答えてしまった。
「いえ、此方こそよろしくお願いいたします。ではまた明日。失礼致します」
電話を終えると、私はふぅと溜め息をついて夕食の準備に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!