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午後5時半。
私は久野さんに連れられてあるサロンに来ていた。
すぐヘアセットとメイクが始まった。
サロンは割とこじんまりとしていて2階がロフトで一階がカットサロンになっていた。
店内の雰囲気は少し温かみの感じる木目調で、全体的にオレンジ色の明かりで包まれていた。またサロン内には、ハーブ系のいい香りが漂っていた。
私は案内されるがまま、椅子に座った。
この2ヵ月美容院にはいけず、すっかり伸びてしまっていた毛先を軽くカットして貰って、シャンプーとトリートメントをする。最後は髪を乾かしてブローしてもらうと髪にツヤが戻って来た。染め直す時間こそ無かったが、随分それだけでも見違えてみえた。
ヘアーは男性スタッフ、メイクは女性のスタッフさんで、1時間ほど慌ただしく髪や化粧を整えた。
そして全て完成して鏡の中にいた自分は、いつもより肌の血色もよく、口紅のノリも良かった。
「わぁ、すごい!」
「どうです?お気に召されましたか?」
「はい、とても綺麗です。ありがとうございます」
「いいえ」
彼女は笑顔で答えてくれた。
髪は丁寧に編み込まれてハーフアップにしてあり、ゆるく巻かれた毛先はワックスで少し遊ばされていた。
雑誌に載ってるようなスタイリングのヘアーといつも俯きがちだった自信のない顔がいつもより輝いて見えた。
この代金全て浅井さんが持ってくれてるのかと思うとちょっとだけ胸が痛んだが、こうまでしてデートに誘って貰えたのは光栄なことだと思ってしまった。
「さぁ、あまりお時間がありませんので、あちらへどうぞ」
私はカット用のクロスを外すと椅子から立ち上がり奥の部屋へと案内された。
そこには、久野さんが居て、誰かに電話している最中だった。
「ヘアーメイク完成しました」
女性のスタッフさんが久野さんにそう告げると彼女は深々とお辞儀した。
「ありがとうございます」
私も彼女と一緒になって頭を下げた。
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