初デート

20/45
前へ
/295ページ
次へ
「さぁ、あまり時間がございません。此方に着替えて下さい」 「これは…」 「僭越ながら、あまりお時間もなかったので此方の方で選ばせていただきました。ワインレッドお似合いじゃないかと思いまして、少しフェミニンな雰囲気のものをご用意しました。お気に召しますでしょうか?」 私は手渡された紙袋から中にあったワンピースを取り出した。すると、襟元にフリルがあしらわれていて、袖がパフスリーブになっているAラインのワンピースが出てきた。それは光沢感のあるシフォン素材が使われているのか動くと揺らめいてキラキラして見えた。 ワンポイントは背中についた編み上げのリボンで、割とザックリと背中が出るデザインだった。 可愛いと思うと同時にちょっと若々しい気持ちもしたが、あまり深く考えずに私は着替えてみることにした。 数分後。 鏡の中には、セットされた髪とメイク、衣装もバッチリの自分の姿があった。私は身体を拗らせ、スカートをヒラヒラと揺らした。気分はまるでシンデレラのようだった。 「ご準備出来ましたか?」 そんなことをしていると、カーテンの向こう側で燁子さんから尋ねられた。 「あ、はい。お待たせしてすみません」 「此方荷物まとめておきましたので、ヒールに履き替えて店の前にすぐいらして下さい。車回して来ますので、なるべく早めにお願いします」 「分かりました。ありがとうございます」 私は頭を軽く下げると、用意されていたエナメルの黒いヒールに履き替えた。
/295ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2036人が本棚に入れています
本棚に追加