プロポーズ

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そして水曜日。 私は言われた通りに履歴書を持って彼のオフィスを訪ねてみた。 都内のオフィス街にあるビル群にしてはこじんまりとしていたけど、中に入ると綺麗なオフィスで、入り口にはカウンターが用意されていて受付の方がいた。 私が受付のところで戸惑っていると、中の人に声をかけられた。 「弊社に何か御用でしょうか?」 「あ、あの面接に…」 「そちらにお掛けになって、お待ち下さい」 受付にいたのはスラッと背が高く、明るめの茶髪でセミロングの綺麗な女性だった。シフォンブラウスにタイトなスカートがよく似合っていた。 彼女は私にニコリと微笑むと、カウンターにある内線を使ってどこかに電話していた。 株式会社 B&M (ブリーチ アンド ミーティング) 浅井宏光は若干35歳にして、従業員150人を抱える企業経営者として注目を浴びていた。 起業したのは彼が29の時。 そう、今の私と同じ歳だった。 それまで勤めていた人材大手での輝かしい経歴と出世街道を捨てて、何故彼がこのビジネスを起業したのか? そこには、少しひっかかりがあった。 だが、注目を浴びるというのは必ずしも、いいことばかりじゃなかったようだ。 彼はどうやら27の時妻を失ったらしい。 それも妊娠中の妻が自殺?とネットニュースに出ていた。 他にも、裏の顔として夜の繁華街でお酒のトラブルを度々起こしているとか、自殺した妻は夫のDVに耐えられなかったとか。 どこまで本当の話なのかわからない。でも、彼も見た目には見えない何かを抱えて生きているのかも知れない。 履歴書を見つめながら、そんなことを考えていると、私は呼ばれた。 先程の女性がにこやかに此方に近づいて来た。 「お待たせしました。こちらです。ご案内致します」
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