初デート

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レストランに入ると、私達は個室というか、パーテーションで隠された奥のテーブルへと通された。 階下に広がる夜景が本当に美しくて、まずはそれに目を奪われてしまった。 煌めく色取り取りのネオンは、目に眩しく夜の街に散らばる宝石のように見えた。 「浅井様。本日はご予約いただきありがとうございます。私此方のレストランでサービススタッフの統括をやっております木下と申します。料理の方はご予約いただいておりますが、お飲み物のご注文ございましたら、伺わせていただきます。メニューは此方にございます」 私が夜景に夢中になっていると、如何にもという風貌の紳士的なスタッフが、ドリンクの注文を聞きににやって来た。 「あ、じゃあ、これ一つ。ボトルで。グラスは2つお願いします」 浅井さんは見せられたメニューの中から、一つを指指すとスタッフさんに注文していた。 「ワイン飲めるよね。赤ワイン一つ頼んだけど」 「はい」 「あなた、こないだ随分呑んでましたもんね。今日は気をつけてください」 彼はそう言うと少しイタズラに笑って見せた。 ちょいちょいこういう意地悪な質問を投げかけたり、発言をするのが嫌らしいと言えば嫌らしいのだけど、どうにも嫌いになれずに居た。とは言え、私もつい反論してしまうのが定番になりつつあった。 「あれは確かに呑んでましたけど、そんなこと言うなら、こんなとこ誘わないでください」 「いや、いい飲みっぷりでしたよ。あまりに飲めない人も誘い辛いしね。まぁベロンベロンに酔っ払われたら置いて帰りますけどね」 「デートでそんなことしませんから!!」 私はつい身を乗り出して、語気を強めてしまった。 「冗談ですよ。真に受けないで」 私は一瞬熱くなってしまった自分を気恥ずかしく思いながら、再び椅子に腰を下ろした。
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