初デート

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私が席に戻ると、次の料理が運ばれて来たところだった。 浅井さんは、食事を中断してじっと待ってくれていた。 「電話、面接の結果ですか?」 「はい。すみません、食事中に」 「いいえ。お気になさらず」 私が席に戻ってスマホを戻すと、再び食事に戻ろうとした。 「ところで、合格したんですか?」 「はい」 「良かったですね」 浅井さんは安心したように首を頷かせるとニッコリと微笑んだ。 「ありがとうございます。あの、浅井さん」 「はい」 「あの、あの…こういうのってこういうのって…」 「はい?」 私が言いにくそうに口籠もっていると、彼は怪訝そうに首を傾けた。 「これってパパ活ってことですか?」 「えっ?パパ活?」 浅井さんは理解出来ないと言う様子で、その言葉を復唱した。 「はい」 私はしっかりと首を縦に振った。 金銭関係を主とする恋愛的なやりとり、それってつまり、そういうことだろう。 急に今まで気づかずにいた自分が後ろめたくなった。
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