初デート

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だが、浅井さんはそれをはねのけるように、高笑いした。 「まぁ、平たく言えばそう言えなくもないですよね」 「ですよね…」 「でも、何がいけないんでしょう?」 私が気まずそうにしていると、彼はそれを一蹴した。 「はい?」 「まぁ、法や社会的な解釈を重んじるなら、そうとられても致し方ない部分はあるけど、恋愛関係においても金銭のやり取りは普通に発生しますからね。それに厳密に言えば、経済支援が目的ではないですしね」 浅井さんはそう言うと、右手でボトルを手にとり、グラスにワインを注いだ。 そして、注ぎ終えるとグラスを持ち上げ喉にグッと流しこんだ。それから吐き捨てるようにこう呟いた。 「頭が堅いと、色々考えてしまうんですね」 私はその台詞に言葉を失った。 なんて言うか、自分勝手で、どうしたって理解し合うのは難しそうなのに、いちいち心をかき乱す。 それが浅井宏光だった。 一見、紳士的で優しそうにも見えるのに、少し距離が縮まったと思うと、途端に突き放される。 やっぱり…こんなの耐えられそうもない 私はとうとう耐えられなくなって、テーブルをバンっと叩くと椅子から立ち上がった。そして、涙が込み上げるのを堪えて涙声で告げた。 「私、帰ります。食事、ご馳走様でした」
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