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それから食事に戻ったけれど、味はよくわからなくなっていた。
美味しいはずなのに。
せっかくのご馳走なのに、ちっとも味わえていなかった。
私が味気ない食事に勤しむ間、浅井さんはボトルの二本目を頼んでいた。
お酒強いんだろうか?
結構なハイペースでグラスに注いだワインを飲み干していた。
だが、若干目が据わってきたところで、私は彼からボトルを取り上げた。
そして、スタッフを呼びお水を貰うと彼に勧めた。
コースの最後には、本来デザートがついていたが、私達がそれらを口にすることは殆どなかった。
私は酔いが回って虚に遠くを見つめる浅井さんの視線の先に、なんとなく自分が引き返せない道を選んだような不安を見た。
「もう、お店出ましょう?」
私が浅井さんにそう促すと、彼はスタッフを呼び出して、お会計するよう頼んだ。
スタッフは、その場で浅井さんからカードを受け取るとレジへと向かった。
「ご馳走様でした」
浅井さんは私がお礼を言うと、小さく頷くように頭を下げた。それから、少し顔を上げると睨むような目付きでこう尋ねてきた。
「で、この後どうするの?」
私はその言葉に身を強張らせた。
楽しむはずで来たつもりが、何故こんなことになってしまったのか?
多分、それは私が浅井さんの本心に触れようとしまってからに違いない。
でも、私は未だに分からずにいた。
彼という“男性“とどう向き合うか。
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