初デート

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「ちょっと、座ってお話しましょうか?」 浅井さんはそうニッコリ笑って、私の手を掴むと、ベンチのある方へと導いた。 私は彼と少しだけ距離をとって、浅めにベンチに腰掛けた。 すると、暫くして右隣にいた浅井さんが話始めた。 「俺、案外嫉妬深いんですよ。そういうの嫌な人もいると思うんですけど、貴方は耐えられそうですか?」 「それは束縛したいってことですか?」 彼は無言で頷いた。 束縛はちょっと嫌だなと思いながらも、今更否定も出来なかった。 「割と不安症なんですよ。何事も準備がないとダメというか、形から入ってしまうタイプでして…」 「あぁ、それは分かる気もします。私も同じように考えてしまう部分はあるので」 私がそう答えると、浅井さんはちょっと残念そうにそうですかと答えた。そんな彼に今度は私が尋ねてみた。 「浅井さん」 「はい?」 「私と恋人になるのに、何か嫌なことでもあるんですか?」 「いやいや、ただ確認しておきたいだけです」 彼は酔った顔をさらに赤くして、慌てた様子で両手を振ると否定して来た。 あまりにさっきまでと様子が違うのが、可愛いくも思えるし、何か踏み切れない事情があるようにも思えてしまう。 確かめたい思いと不安で仕方ない気持ちと、 せめぎ合う中、私は更に彼ににじり寄ってしまった。
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