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「近い、近いです!!」
慌てふためく浅井さんに私は興奮を覚えながらも、つられないないように意思を固めて、自分の気持ちをぶつけた。
「浅井さんが、まだ本気になれないのは十分承知です。でも、それでも私はあなたと表面的な関係じゃなくて、真正面から向き合ってみたいなって考えてしまいました。だから、私はもう逃げません」
浅井さんは私の勢いに気圧された様子で、身を退けぞらせると、首を縦に振っていた。
私は、困り果てた様子の彼を前に虚しい思いに染まりながらも、身を引いた。
すると、浅井さんから思いもよらぬ言葉が返って来た。
「そこまで本気で考えていただけるなんて光栄です。是非、その言葉が本当か試してもいいですか?俺、本気になったら逃しませんよ?」
彼はさっきまでの、おどおどした素振りとは打って変わって、猟奇的な獲物を狩るような鋭い眼差しで私を見つめていた。
そして、私に詰め寄ると、右手で頬にそっと触れ、すっと滑らすようし顎を持ち上げて自分の顔に近づけた。
ヤバい…
いきなりこんな風に立場が逆転するとは思っていなかった。私は、視線のやり場に戸惑ったが、気付いた時には互いの唇はもう重なっていた。
そう、ただ触れるだけじゃなくて下唇を喰むようにして、彼はその感触をしっかり味わっていた。
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