新しい風

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宏光がそんなことを考えていると、碧音が急に話掛けて来た。 「父さん、俺一つ決めたことがある」 「うん、何?」 「俺、朝武受けようと思う」 宏光は驚いた。そして、反対した。 「いや、お前は地元の進学校に行けばいい。わざわざ朝武に行く必要なんてないよ」 「ううん。俺も東京に行く。それから父さんが通ってた学校に入って、同じ景色が見てみたい」 宏光は気乗りしなかった。 確かに朝武は都内でも1、2を競うような名門校であるのは間違いない。 でも、なんせあの学校は裕福な富裕層が通う学問や武芸においてトップを誇る学校でもある。 それに文武両道と謂わんばかりに、朝練習や朝テストをやることが伝統で、肉体も頭脳も酷使させられることも多かった。 最近は以前程ではなく、自由な校風に変わりつつあるとは聞くが、あの中で、庶民の学生が如何に頑張っても簡単にはその世界には馴染めない。 宏光だって、学園トップになるには養子であっても浅井の名前がないとどうしようもなかっただろう。 息子にはそこまでさせたいとは宏光は考えてはいなかった。 なのに、自分から朝武に行きたいと言い出すなんて… なんのために、妻側の実家でのびのび育てられる環境を整えたのか分からない
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