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「またこれか…」
「うん、300円頂戴」
宏光は財布から小銭を出すと、碧音に手渡した。
「父さんやらないの?」
「やらないよ。子供のゲームだよ」
「大人もやってるよ」
「いや、俺はやらない」
これも大体お決まりのやり取り。このゲームが人気になったのはもう半年も前のことだ。
少年漫画で連載されてる漫画が、スマホゲームとしてアプリ化され人気を博したのが始まりだった。そこで、更なる収益を見込んだゲーム会社と出版社が、より臨場感を持って楽しめるようにとアプリと連動した体感型のゲーム機をゲームセンターへ設置したところ、学生達を中心に大人気になった。
最近はマシにはなっていたが、以前は整理券を発行していた程で、大人の宏光からみれば、仕掛けた側は随分儲けたんだろうなと言う印象だった。
今日も既に30分待ち。
テーマパークのアトラクションかよと突っ込みたくなる気持ちを抑えて、宏光と碧音は列の最後尾に並んだ。
「碧音、さっきの話だけど、朝武を受けたいのは父さんと暮らしたいからってことなのか?」
宏光はさっきの話を再び息子に持ち掛けた。
「うーん、そうかな」
「朝武受けるなら、ゲームしてる暇なくなると思うけど、塾とか今より増えるし…」
「分かってるよ」
碧音は無邪気に答えた。
宏光は不安だった。息子に自分と同じような道を歩ませるのが…
不安でたまらなかった
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