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もう26年前になる
宏光が10歳の時。
ある大会に出たのが彼の運命を大きく変えた。
ジュニアの将棋大会
その主催者が浅井長次郎だった。
あの大会に出て優勝したのは偶然だったのかも知れない。
そのおかげで、宏光はある権利を掴んだ。
浅井長次郎はその大会の優勝者に何か一つ願い事を叶えることを約束していた。
当時、子どものためにスポーツ大会や将棋クラブに寄付していた長次郎に、子供達は毎年ありとあらゆるお願いをした。
例えば海外旅行がしたい。有名な画家に会ってみたい。宇宙飛行士になりたいからNASAに行ってみたい…
毎年優勝者の願いは必ず叶えられていたようで、新聞の地域面にはその大会の様子が詳しく書かれていた。
大会の1年前、たまたま新聞で見つけた記事で宏光は施設長に頼み込んでそれに出たいと懇願した。
一発逆転。
ダメ元でもいい。彼に頼みたいことがあった。
それが浅井長次郎の養子になること。
子供のお願いとしては、あまりに重く切実だったに違いない。
周囲はざわめき、大人達は唖然としていた。
当時の地域新聞も宏光の発言を大きく取り上げた。
だが、長次郎はその日とはいかなかったが、しばらくして宏光にある条件と引き換えになら、その夢を叶えてもいいと譲歩してくれた。
それが朝武中学の中学受験だった。
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