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宏光は、勉強はともかくスポーツは施設育ちのために習えるはずもなくしたことがなかった。
サッカーやバスケ、剣道、テニス、水泳…
技術や体格、運動センスが問われそうな分野で勝負するのは難しいと思った宏光は、これなら唯一なんとかなるかもしれないと思った部活があった。
宏光は将棋はまあまあ得意だったが、それには並外れた集中力と計算力が必要だった。
それが活かせる部活は恐らく弓道しかなかった。
彼は学校終わりにいつも寄ったのが近くにあった図書館だった。そこでたまたま知り合いになったおじいさんが将棋雑誌を読んでいて、色々話を聞くうちに、将棋の相手を度々するようになったのが将棋を始めたきっかけだった。
算数は得意だったが、勉強に何の情熱もなかった宏光が、将棋をきっかけに頭を使う楽しみを覚えたのは言うまでもなかった。
それが小学2年生のときの話だ。
このおじいさん、どうやらなかなかの腕前だったようで、元がプロだったと言うのは朝武に入学してから知った。そして朝武の出身だということも分かった。
あのおじいさんに出会ったことは生きることに絶望を抱えていた、まだ小学生の宏光を救ってくれたには違いなかった。
だが、そんなおじいさんは宏光が小学3年生の冬になる頃、めっきり図書館で見かけることがなくなってしまった。
それでも、宏光は1人で将棋について勉強し続けた。
そして、たまたまジュニア向けに将棋大会をやっている偉い人がいると図書館で噂に聞いて、あの新聞記事を探しあてた。
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