新しい風

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あれからもう20年以上になって、息子が同じ道へ進みたいと申し出て来るとは夢にも思わなった。だが、自分の意志でや将来を考えるまでに成長したことに感慨深さを覚えた。 そんなことを考えながら、気付くともう次は自分達の番だった。 「父さんもやるよね?次だよ」 「えっ?」 「やろうよ、たまには一緒にやりたい」 碧音は口を尖らせてそう言った。 宏光はその言葉を聞いた瞬間、胸がキュッと痛くなった。 「仕方ないな」 宏光は2人分600円を機会に投入すると、ゲーム機の中へと入った。 碧音は何回もプレイしているはずなのに、興奮気味に中に掛けられていた2つの銃を手にした。 そして、一方を宏光に手渡してきた。 このゲームはスマホで自分がプレイしているステージと同じステージを擬似体験出来るのがウリで、レベルやランクによって出てくるモンスターが違う。 碧音は早速持ってきたスマホのアプリを機会に翳すと、ステージがゲーム機の中に投写された。 ランクS5 金色の銃 ステージクリアまで後32ヒット  賭け金5000クルト 残金4800クルト 正面の画面には、プレイタイムやゲームの戦績といったプレイヤー情報が一覧になって流れていた。 それはこんな悠長なことしてたら待ち時間が出るのも頷ける。 宏光は呆れていたが、碧音はワクワクした様子でゲームが始まるのを待っていた。 一通りデータの登録が済むといよいよ正面にスタートが表示された。 どうやら街はウェスタン仕様で、モンスターを倒すと褒賞が貰える仕組みらしかった。 まずはプレイヤーの選択に始まり、銃がそれぞれのランクで与えられる。 碧音は随分やりこんでいたからか、割と派手な武器が来た。 一方、宏光は、初心者レベルの1番シンプルな銃だった。 装備が済むと、テンガロンハットを被った親父のキャラクターが、ゲームについて説明し、その後2人の前には夜の街が出現した。 持っている銃を画面に当てると画面に赤い光がチラついた。 確認して現れたモンスターに焦点を合わせてヒットさせる。 仕組みは至ってシンプルだった。 そして宏光の得意なスタイルだった。
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