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「どうぞ。ブラックでいいかな?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
宏光は詩子から出されたコーヒーを受け取ると、右手でカップを持ち上げそっと口付けた。
「で、さっきの話だけど、あなたはどうしたい?」
詩子は自分の用意したコーヒーにミルクを入れると、再び話を戻そうとした。
宏光は相変わらず何も言えないままだった。
「こんなこと言うのは、本来良くないのかも知れないけど、あなたが浅井家の養子としてあの家に関わりがある以上、息子である碧音の将来や進路については、向こうと相談する必要があるんじゃないかしら?」
「浅井家は俺の生家でもないし、必要以上に関わるつもりは向こうもないと思います。確かにたまたま俺が息子を授かったのはありますが、碧音に浅井と直接的な関わりはないんですから」
詩子は首を横に振った。そして、手元に隠してあった一枚の封筒を差し出した。
「これ、あの子宛に来た手紙。文面読む限り、碧音はいずれあの家の一員として迎えいれたいんじゃないかしら?あの子に母親が居たなら、まだ抵抗しようもあるけど、あなた1人で育てあげられるとは相手は思ってなさそうよ」
「そんな…俺はただ普通に」
「あなた達の普通はもうここにはないの。それに、あの子の将来がもし思うように行かなかったら、それこそ私達責任取れないわ」
宏光は詩子の言葉に何も言い返せなかった。
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