プロポーズ

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相手は、そんな私を前に溜め息をついた。 そして、眼鏡を外すと再び席を外してデスクの引き出しから小さな箱を取り出してきた。 それから、私の前にそれを置いた。 「あなたの言いたいことってつまり、自分が選ばれた特別な理由が欲しいってことですよね。女性としてはどんなに男女平等の時代と言ってもプロポーズという夢はなかなか捨てられない方もいらっしゃるでしょう。 アラサーで就職も上手くいってないし、人生他にやりたいことや誇れるものがないなら、結婚に夢見たくなる気持ちはいくら僕でもわかりますよ」 結婚に夢見たい気持ち… 彼の見解は当たらずも遠からずかも知れない。 25の時に学生時代から付き合っていた彼氏に振られて以来、プライベートでも社会生活でも何一つ浮いた話題もなかった。 派遣社員として職をいくつか転々として、すっかり恋愛とか自分の人生に情熱を持てるものがなくなっていた。 一時期好きなアーティストを追っかけていた時期もあったけど、お金は無くなる一方だし、周囲は結婚したら足を洗うのか年々同士は減っていく一方。 そのうち、そのアーティストが好きだったのか、ファンのみんなで盛り上がってるのが好きだったのか分からなくなった。 今の私には、もう夢見る力なんてないはずだ。 でも、正直なところ結婚や恋愛となると少し理想が捨てきれない部分はあった。 いくら、お金があって、容姿も華やかに着飾れて、何不自由ない暮らしや生活が手に入るとしても形だけの妻になりたいかと言われると微妙だった。 だから、彼の提案は魅力的だと思う一方、どうしても虚しさも感じてしまう。 もういい歳だというのに… 私はまだそういうものに対する憧れを捨てきれていなかった。
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