新しい風

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翌日。午後6時 宏光は仕事が終わってから、浅井の本家に向かった。 ここを訪れるのは久しぶりだった。 最後に来たのは、もう10年近く前になる気さえした。 度々長次郎とは連絡をとることはあったが、本家に招集されることはもう稀になっていた。 都心の一等地にある本邸は、ポストモダニズムに影響を多分に受けており、クラッシックな洋館とは異なり、ガラスやコンクリートが目立ち、広大な庭にはへんてこりんなオブジェまであった。 研究施設のようにも見えるし、美術館に来たような気持ちにもなるそんな場所だった。 宏光は玄関に入って、真っ直ぐ2階にある長次郎の部屋へと向かった。 先に電話で連絡はしてはいたが、面と向かって話合うのはやはり気が引けた。 宏光は深く深呼吸をして、心を落ち着かせてから部屋のドアをノックした。  
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