新しい風

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初出勤の日だった。 あの日電話を貰ってから、緊張感を持ちながら日々を過ごした。 そして、漸く訪れた月曜日。 出社すると、私はすぐ社長室に呼ばれた。社長室といっても小さな事務所なので、こじんまりしたものではあった。 社長の赤西さんは、背が高くてしっかりめのパーマと黒縁のメガネが印象的な男性だった。 地黒なのかどこかチャラそうな雰囲気もあるが、着ていたシャツが淡い水色でカーキのチノパンという出立ちもあって、爽やかな清潔感が感じられた。 そして、赤西さんの隣に座っていた見知らぬ男性。 彼は無言で俯いていた。一見鼻が高そうで、髪はサラサラの茶髪だった。ピアスが左耳にはいくつか空いている。着ているスプライトのシャツと濃紺のベストの組み合わせは個人的には好きで、顔が気になった。でも、確認出来ずにいた。 赤西さんは、一回咳払いしてから話し始めた。 「佐々木さん、今回職務内容に急な変更がありまして、もし今からお話しする内容で良ければ是非、此方で採用させていただきたいんですが、お話しさせていただいて大丈夫ですか?」 「はい」 赤西さんは私が頷くのを確認すると、視線を右隣にいた男性へと移した。 「まず、話をするに当たって彼を紹介したいと思います。此方うちと専属契約して貰ってるフリーのカメラマンで元はモデルやってた中野健久くん」 彼は名前を紹介されて漸くその面を上げた。 私は思わず、その顔を凝視した。
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