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「どう、今からスタジオ抑えてあるから、中野と写真映りだけでも試して見る気ない?ただ、まぁちょっと脱ぐことにはなるんだけど…」
「脱ぐってどういうことですか?」
私は頭が真っ白になった。
そんな私の不安そうな表情を見て、二人はやっぱりねという風に互いの顔を見合わせていた。
「普通の洋服も販売するつもりではいるんだけど、メインは大人向けのインナーウェアなんだよね。着回しやすいトップスやブラウス、部屋着やパジャマに下着とか、毎日快適に着られて日々のトキメキも忘れない。そう言う商品がメイン。それで、そのイベントでも、2種類のテーマがある」
赤西さんはそう言うと、ファイルを開いてデザインの書かれた紙を私に見せてくれた。
「都会的でモードなファッションを楽しみたい人向けのデザインTM(トキシックモード)とスローライフが定番になってきた現在、オーガニックを取り入れて自然体の美を楽しみたい人向けのSF(スローフェミニン)二つのスタイルを展開させようと思ってるんだ」
私は差し出されたファイルのデザイン案に目を通した。どちらもよく考えられていて、デザイナーが違う人だった。
私は一通り見終えて顔を上げた。
私に感想を求めるような素振りで、赤西さんは質問して来た。
「興味持てそう?1人の女性の内面にある全く違う二つの顔をイメージしてプロモーションに使えたらと思うんだけどね」
「はい。拝見させていただいて、流行のスタイルと独自性がうまく取り入れられてあったのが印象的でした。下着はついつい毎日使うものだから、機能性を重視してしまいますが、同時に自分の魅力を引き出すアイテムとしても重要で、やっぱり自分に見合うものをつけるだけで自信を貰える気はしますね」
私は拙いながらも感想を伝えた。
すると、今度は中野さんが話し始めた。
「正直、俺らのやることって半分はファッションを通して、自分という内面と向き合うことを購買者に求めてる部分あるんだよね。
みんな、なんでモデルが着た服を買うかって、それを身につけて自信だったり、勇気だったり、感覚的な物を愉しめるから買うわけじゃん」
「はい」
「俺らのコンセプトには夢を持てなくなった大人に夢を見せたいってのがある。だから、あなたにピッタリだと思うんだよね、この企画」
私は何も返せなかった。
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