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ザーザーザー
早朝に雨の音で俺は起きた。
時計を見ると5時30分。いつもより1時間も早く目が覚めた。
学校に行きたくないと思ってしまうような雨だった。
俺は朝の支度をし、重いため息を吐きながら学校へと歩いていった。
学校に着き、教室へ向かう途中に担任の山本先生に声をかけられた。
前の件もあり少し苦手意識を持っていた。
「ちょっとお話しましょう」
先生はそう言うと歩き始めた。最初から断るという選択肢は無かったらしい。
空き教室に移動すると先生はすぐに
「まだ、あんな事言っているの?」
あるな事?何も身に覚えがないと思う。あの件から先生に関わっている訳でもない。
「…ちょっと身に覚えがありません」
キッパリと言うと、学校で噂になっているわよ。と返ってきた。
「噂…?」
「そうよ。男の子には慣れないんだからそんな事言ってないで中学の事を考えなさい。」
頭が真っ白になった。もうその話は先生にはしていない。美希にしか話していないのだ。
「もしかして、美希…?」
ボソッと呟いた声は先生に聞こえることなく、先生の小言だけが空き教室に響いていた。
先生の言葉なんて頭に入ってこなかった。
俺はあんなに性別で悩んでいたのに、あんな事?話もろくに聞かないくせに?俺を、俺を
「俺を見てないくせに勝手に言うなよ!!!!」
俺は気づいたら叫んでいた。
「柳沢さん?貴方のために言っているんですよ」
俺の為?笑わせるなよ。俺自身と向き合おうとしてないくせに。
結局はそうやって差別していくんだ。美希も先生も友達も…
「俺の為ならそっとして置いてください。」
どうせ変わらないんだから。
俺は空き教室を出て教室に向かった。
俺は教室の扉を開けて周りを見渡した。
教室は静まり返り、視線は俺に集まっていた。
1人の男子が口を開いた。
「おかまが学校に来てるぞ〜!」
その一言でほとんどの男子は笑っていた。
その光景が悔しくて何も言えなかった。
女子も俺に聞こえないように何か言っているのだろう。
そこに美希が居たので、思わずなんで広めたのかと問い詰めたくなった。
俺は自分の席に座り、何故こうなったのか後悔の嵐が襲ってきた。
なぜ美希はあっち側にいるのだろうか、あんなにも真剣に話を聞いてくれたのに。
昨日の美希と話した光景が浮かんでくる。視界がぼやけて来て机に突っ伏して寝ている振りをした。
あのとき、美希は俺の話を聞いて否定の言葉をかけなかった。それと同時に賛同の言葉もかけなかった。
結局、賛否はみんなの反応を見てからにする為に何も言わなかったのだろう。
そう思うと、俺ではなくて皆を見ているようで余計に苦しくなった。
それから美希と話すことも無く、一日がやけに長く感じた。
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