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今日は色んなことがあって帰る気分でもなかった俺は近くの公園のブランコに乗っていた。 キコキコと鳴るブランコの音をただ無心に聞いていた。 「あー!!!!俺の特等席!!!」 急に知らない男の子が俺に向かって叫んできた。暗くてよく見えないが、声からして小学生だろうか。 すると、男の子はこっちに走ってきた。 「なぁなぁ、お前なんでこんな夜に公園来てんの?」 それは君もだろ。と言おうとしたが、早く終わらせたかったから「気分転換。」と一言で返した。 「ここの近くに綺麗な夜景が見れるところあるんだぜ!」 「?」 何が言いたいのだろうか。男の子は無邪気に笑ってこっちを見つめてきた。俺とは反対の性格をしている。 「一緒に行こうぜ!」 突然男の子は俺の手を掴み走り出した。 俺も引っ張られるように無我夢中で夜の道を走った。 「はぁ、はぁ」 引っ張られるがままに連れてこられたのは河原付近の野原だった。誰もおらずただ静かな場所だった。 「おい、俺はもう帰るぞ」 俺は帰ろうとしたが男の子は後ろから声をかけられた。 「俺は柊蒼。中学1年生だ。」 「はぁ?」 何いきなり自己紹介してんだ、そう思った。会った時からこの男のせいで調子が狂う。 「お前、名前は?」 「…柳沢菜々。小6。」 人間が嫌いとか言ったけど、やはり簡単に嫌いにはなれないらしい。 振り向いて柊に質問した。 「なんで見ず知らずの人にそこまで仲良くしようとするんだよ。」 俺はじとっと見つめて聞いた。 「先輩って知っても敬語無しかよ」 柊は可笑しそうに笑っていた。 「うるさい」 なんか恥ずかしくなって急かすように答えを待った。 「俺、最近ここに引っ越してきたんだよ。それで友達も居なくてさ!困ってたんだよね〜」 ニコニコとしながら返事をした。 最近引っ越してきたばかりなのに公園のブランコを特等席と呼んでいたのか…。 「気になったんだけど、何で俺って言ってんの?」 ドキッとした。鼓動が早くなり思うように声が出ない。あの時と同じだ。 でも、言うだけ言ってもうあの公園に行かなければいい。馬鹿にされても合わなければ大丈夫だ。 俺は小さな声で言った。 「俺、男なんだ。」 沈黙が怖くて、じっと自分の靴を見ていた。 「ふーん。じゃあ、男友達の記念として今度アイス奢ってやる!」 「は?」 顔を上げると野原に寝転んで楽しそうな顔をしていた。俺はその光景が信じれなくなってつい本音を言ってしまった。 「おかしいだろ!なんで何も言わねぇんだよ!!どう見たって女だろ!バカにしろよ!!!笑えよ!!!!」 声が枯れそうになるまで叫んだ。 人間は普通の人と違ったら馬鹿にする。人間は裏切るもの、だから人間を信じない。 しかし、ここで性別を否定をされ無かったら俺はまだ人間を信じて行かなければならない。 「なんで?俺は別にいいと思うよ、人と違ってても。」 柊は微笑んだ。ただ綺麗に。 「だって、俺は皆に馬鹿にされたんだ、大勢いるのに、誰一人受け入れて貰えなかった…」 ついつい本音が出てしまう。弱みにつけ込まれると耐えきれなくなり話してしまうのが俺の悪い癖だ。 「…集団」 「え?」 「先生にある質問をされた時、自分はYesが答えだと思った。しかし、最初の1人がこれはNoだと答えた。次の人も次の人も次の人も、またその次の人もNoだと答えた。そして自分の番が来た。自分ならなんて答える?」 柊はこちらを向くことなく淡々と言葉を発していた。 少しすると、柊は自分の隣を手で軽く叩いた。俺は柊の方へ歩いていき隣で寝転んだ。 「自分ならNoと答える。」 俺は目を瞑り呟いた。 「それが一般的だな」 柊はそう言うとそのまま黙って空を見ていた。 あぁ、集団とはそういうものなのか。 目を開けて空を眺めた。 「真っ暗だな。」
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