熱伝導

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「穂乃花ちゃんって、直哉の妹ってマジ?」 「ああ、マジマジ」 「マジかああ、血繋がってないのもマジ?」 「マジマジ、俺は母さんの連れ子、あっちは父さんの連れ子」  へえ、そうなんだ、と廊下の向こうにいる穂乃花を、じっと見つめていた可愛い子大好きカズキングはニッと笑った。 「ねえ、穂乃花ちゃん紹介してよ」 「は?」  少しだけ考えて、首筋に手をあてた。 「アイツに聞かないと、何て言うのかわかんねえからなあ」 「前もトモナリに言われてそうやってはぐらかしたじゃん。ひょっとして、直哉も穂乃花ちゃんのこと?」 「穂乃花? んなわけねえだろ」  穂乃花に俺の声が聴こえないように、そっと背中を向けた。 「大体、穂乃花のこと女子なんて思ったことねえしな」 「だったら早く穂乃花ちゃん紹介してよ」  カズキング、マジしつこい。なんでお前みたいなチャラいやつに穂乃花を紹介しなきゃなんねえんだよ。  あのな? 穂乃花はな、今まで彼氏なんかいたことねえの! その記念すべき第一号がお前みたいなティッシュ一枚よりも軽そうなヤツなんか、兄として絶対認められない。 「はー? 友達の彼女が妹とかマジ面倒くせえから勘弁しろって」  顔では笑いながらも苛立ちマックスなのは自分でもわかっている。搔きむしった首筋がヒリヒリとした。  風呂上がりの穂乃花が俺に気づいて廊下を半分開けてくれる。頬がピンクに紅潮し、キレイだと思った。  そっと気づかれないぐらいで故意に触れてみた右手の甲。穂乃花の温もりがじんわりと伝導した。これが他の誰かのものになるなんて、絶対に嫌だとハッキリ思った。  
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