ナイトメア その1 ボ〇ー・オ△ゴン似の同僚との出張

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ナイトメア その1 ボ〇ー・オ△ゴン似の同僚との出張

(ちょっと、待ってくれよ!)  心の中で小さく叫んでいるのか? それとも、小声で愚痴を言っているのか?  濃い灰色っぽいスーツと、黒っぽいロングコートに身を包んだガタイのイイオトコが、僕の前5mを急ぎ足で歩いていく。  右手には重そうな黒っぽく四角い縦長のトランク。  でも、底の方は少しひしゃげている。  実は、僕も同じようなトランクを右手に引き摺っているのだが・・  ここは・・駅構内の乗り換えのための通路の様子。  周囲にはパラパラと人の気配を感じる。  前を行くオトコは、やや背が高く、タレントのボ〇ー・オ△ゴンに似ているが、僕の仕事の同僚だ。  今日は、何かの学会の発表会?に出席した後に、宿のホテルに向かって急ぎ帰っているところだ・・という情報が脳裏に浮かんでくる。  僕らは5m程の間隔を開けて、足早に複雑な駅の連絡通路の階段を上り、少し広い通路へと出た。  そのとき───数人の白人?と思われる男女のグループの横を通り過ぎたのだが、彼らも同じ学会の発表に出席しており、その帰り道らしかった。  皆、黒っぽいスーツに身を固めている。 「石川安生(いしかわあんじょう)から来ているなんて、信じられない!」  グループの中の金髪の女が小声で僕たちのことを言っているのが耳に入る。  横目でチラリと見たが、赤い唇が印象的な、かなりの美人であった。  彼女が言っている意味は──当日の朝、発表会の会場まで来るにはあまりに遠い宿泊先なので、信じられない!──という意味であることを、僕は理解していた。 (石川安生(いしかわあんじょう)?って、どこらへんだったっけ?)  僕はそこが宿泊先のホテルがある場所であると理解していたが、そこに向かうための鉄道の路線を知らなかった。  それを知っているのは、前を行くボ〇ー・オ△ゴン似の同僚だけである。  そうこうしているうちに、目の前に、急な細い階段が現れ、どうやらこれを上って行かなければならないようであった。  僕らは必死になって、重いトランクを持って階段を上っていく。  上りきると、そこはやや広いホームで──僕の目の前5mで、ボ〇ー・オ△ゴン似の同僚は足を止め、トランクを置くと、肩で息をしつつ、両掌(りょうてのひら)をやや曲げた膝の上に乗せて、汗ばんだ顔をして僕の方を見ると、ニヤッと微笑んだ。  僕も精魂尽き果てている感じではあったが、目的の列車が発車するホームに着いたことを理解した。  そして───同僚の背後に、目的の列車が滑り込んでくる様子が目に入った───
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