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我が胎内に
天より授かりし生命
ゆるり ゆるり
十月十日の時刻む
刻々と刻む 時計の針
会える日へと近づけてくれる
生命の重みを我が身の胎内に
内よりの生への力
強く感じる
嫁した時より 男児を望まれ
女児が続けば責められる
あそこの嫁さま
産んで三日後
姑に枕を蹴飛ばされたんだとよ……
耳に届きし声に
目を瞑り耳塞ぐ
宝の子 男も女もなかろうが……
そんな思いを胸に秘め
元気であれよと 腹撫でる
男であれよと 腹撫でる
動けや 動け
たんまり 動け
十月十日の時刻み
暁の光浴びし
我が子
おお…おお……
元気な玉のような
男の子じゃあ……
その声に すべての我が力
一気に抜ける
でかした でかした
跡取りじゃ
その声に 嫁のつとめ果たしたと
安堵する自分がいる
元気に 立派に 育ってくれろ
まだ小さき手を見つめ
その手に何かを託そうとする
そんな小さき手に
私は何を託そうと言うのか
それでもわからぬ何かを
その小さき手に託そうとする
やがて時代の荒波押し寄せる
否が応にも飲まれていく
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