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第八話 スキル
気持ちよかった。スライムボディは本当に優秀だ。
今になって気がついたけど、もしかしたら・・・。家に帰ったら試してみよう。たしか、丁度いい物があったと思う。私は興味が無かったけど、ママのママが買ってくれた。あまりにも興味がなかったから、天井裏に入れたままになっている。
まずは、アイテムボックスの整理だ。
アイテムリストを見る。
え?ほぉ・・・。並び替えが出来るようになっている。使っていると、レベルでも上がって、機能が増えるの?
ゲームみたいだけど・・・。まぁ便利になるのだから、文句はない。
試しにやってみたが、グループ化が出来る。
パソコンのフォルダー分けみたいな要領でやればいい。
うん。すごく綺麗になった。フォルダーの中にフォルダーが作られる。
うん。うん。こうじゃなきゃ!
ほぉ・・・。フォルダーで取り出せるみたいだ。岩だらけのフォルダーを作って、一気にリリースしたら、攻撃手段としては優秀だ。
アイテムボックスのレベルが上ったからなのか、見える位置なら、どこにでもアイテムを取り出せる。それこそ、山の上でもOKだ。今度、海に行って、どのくらいまで遠くに置けるか確認しよう。取り出しは、問題はなさそうだ。
アイテムボックスに入れるのは、やはり触らなければダメなようだ。見えるものを入れることは出来ない。
さて、アイテムボックスの中身を・・・。
うーん。
私の持っているスキルは、本当にアイテムボックスなのかな?
ギルドに書かれていた説明と大きく違っている。
時間経過がしない。
氷が溶けていない。
入れた状態で、保存されている。目覚し時計も入れてみたが、入れた時間で止まっていて、取り出したら動き出した。
うん。私のアイテムボックスは、時間停止がするし、容量も大きい。きっと、魔物用のアイテムボックスで、レベルが上がったから機能が違うのだろう。そういうことにしておこう。考えても無駄な気がした。こういうスキルだと受け入れよう。
それにしても容量がバグっている?
1メートル四方の岩が、見ただけでも10個は入っている。正直な話。こんなにいらない。岩を取り出して、形が・・・。スキル錬金で、岩の形を整えられないかな?
”錬金”
うーん。何も発生しない。
説明が欲しい。
そうだ。素材に触りながら、錬金を行えば!
岩に触りながら・・・。
”錬金”
お!何か表示が出てきた。
化学?多分、これって・・・。岩の成分だよね?えぇぇぇぇぇ。スキル錬金ってそういうこと?成分を取り出すの?使い途があるの?
私には無理だ。ただ、岩の形を変えたかっただけなのに・・・。成分を取り出して、どうしろって言うの?無理無理。
でも、レベルが上がれば・・・。でも、成分別に分解して、環境に影響しないのかな?
アイテムボックスの中で、錬金とか出来ないの?
出来た!
フォルダー単位で錬金が出来る。でも、時間が必要になるみたいだ。でも、いいや。気にしてもしょうがない。
次のアイテムは・・・。
魚?うーん。正直、処理に困る。取り出すと、生きている。アイテムボックスは、生きているとダメと書かれていたけど、うん。決めた。気にしない。全部で、20匹以上だ。これも気にしない。他にも、サワガニとか、よく知らない水棲の虫?みたいな物が大量に入っている。なぜか、水までアイテムボックスの中にある。川の水も取り込んでいる。
そうだ!
地面に、触手を伸ばす。地面に触れながら、アイテムボックスに入れと考える。範囲を指定して、深さをしてしたら・・・。
出来た!錬金を組み合わせて、成分に分解しながら、アイテムを格納するイメージでやってみた。
そうか、こういう使い方が出来るのなら・・・。
まずは、井戸の近くに移動して、子供の時からやってみたかったこと、”その2”だ。庭に、池を作る!ポンプもパパが買っていた。ママに反対されて、頓挫した計画を・・・。
井戸の近くに、パパとこっそり池を作ろうと、掘った場所がある。ジャンボエンチョーで買ったプラ池が埋められている。あの時には、ママに怒られたな。倉に行けば、砂利もある。草木は・・・。あっ!有る!
排水は、少しだけ遠いけど、小川が流れている場所まで引っ張ればいいかな。そもそも、川に居た魚が池で大丈夫なのかな?小川に放流してあげたほうが・・・。うーん。よし、わからない!私は、今は魔物だ。自分がやりたいことをやろう!
なんだかんだ頑張って、プラ池を設置。砂利も倉から持ってきて設置した。パパが作っていた水瓶も設置した。井戸から水を吸い上げる装置を設置した。ソーラパネルも置いて・・・。排水用の塩ビパイプを地面に埋め込んで、フィルターを付けた。水瓶にもフィルターが付いている。井戸からの水を溜めてから、砂利やフィルターを通して、プラ池に入るようにする。
出来た!水の吸い上げや水瓶からの水量は、後で調整する。
まずは、川の水をプラ池に入れる。残った水は、水瓶に入れる。川で採取したと思われる生き物を、全部プラ池に入れる。
プラ池の周りに、岩を積み上げる。私が、池を見るための場所だ。
ふふふ。パパ。庭に池が出来たよ!草木はダメだったから、裏山に行ってみるよ。
竹林にすれば、ママも文句を言わないよね?
ホタルとかどこかに居ないかな?
え?何?
何かと繋がった?
”・・・・。ぎゅがぁ”
怖い、怖い、怖い、なんで、死ぬ。
何が起こったの?いきなり、殺されるイメージが流れ込んできた。嫌だ。怖い。涙は、出ているかわからないけど、涙が出ている。心が何かを叫んでいる。死にたくない。死にたくない。
ふぅ・・・。
え?また?何かと繋がった。
あっ
”きゅきゃぁぐりゃ。・・・・。・・・。きゅヴぁる”
怖い、怖い、何を・・・。ダメ。
恐怖と恐怖を越えた憤りを感じる。流れ込んでくる感情が、私を掻きむしる。ダメ。怒りを、哀しみを超える怒りは、自分を壊す。
それから、何度も何度も何度も同じ感情が流れ込んでくる。
パパが、ママが、実也が、実紗が、私を置いて死んでしまった。
事故で殺された。犯人を殺したい。殺したい。私の全てを使ってでも、犯人を殺したい。4人を、私の大切な人を奪った、彼らは、運転していた奴が、たったの3年。同乗者は、半年だけ・・・。
そんなことが許されるのか?初心者だったから?
関係はない。初めて、包丁を持った人が、人を殺しても、人殺しだ。車の運転だけが何故、違うの、理解できない。
私のパパとママと兄ちゃんと妹を返せ!ヘラヘラ笑って、頭を下げる顔を忘れない。私は、彼らを・・・。絶対に、忘れない。
同じだ。何が、殺されているのかわからない。でも、今、私に流れてきているのは、理不尽に殺される。恐怖と怒りと哀しみの感情だ。
パパの死ぬ時の感情を夢で感じた。ママの最後の言葉を病院で聞いた。兄ちゃんの綺麗な死に顔を見た。妹のぐちゃぐちゃになって、恐怖で固まった顔を見た。全部が、全部が、私の感情だ。
今、流れているのも、私の感情だ。私が感じている。私が思っている。
忘れたわけでは・・・。ない。
お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが、封印してくれた感情。蓋が開いてしまった。
ドロドロとした感情が湧き出してくるのがわかる。
私は、この感情の制御を、お祖母ちゃんに教わった。
”感情をぶつける対象を見つけなさい。そして、対象以外には優しく接しなさい”
寝られない魔物。
でも、私は感情を持っている。私の心だ。
理不尽に(多分)殺されていく命。何者なのかわからない。殺している奴もわからない。
でも、この感情は、私の物だ。私が感じている、恐怖であり、怒りであり、哀しみだ。
感情をぶつける相手を探して、しっかりと、私の感情となった、恐怖と怒りと哀しみをぶつける。これは、確定事項だ。
私は、魔物になってしまった。スライムになってしまったことへの憤りは不思議とない。
”自由”に生きることにする。私がルールだ。私は、私が”やりたい”ことをやる。その為にも、スキルをしっかりと確認しないと・・・。
壊された日常は、取り戻せない。なら、新たな日常のためにも、必要なプロセスだ。
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