序章

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序章

第一話 え?  空想上の生き物が目の前にいる。  違う。正確には、ガラスに映るのは、私だ。でも、私ではない。 『認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを・・・』  ダメだ。現実は、何も変わらない。  私史上、言ってみたいセリフの15位(適当)を呟けない。  これってあれだよね?  ニュースで流れていた。”モンスター(魔物)”。  私も、人並みにゲームを嗜むから、すぐに理解できた。日本に、地球に、魔物が発生した。そして、モンスターを討伐すると、”スキル(異能)”が芽生える。始めて討伐するときには、高確率で異能に目覚めるようだ。異能は、魔法と言われる物も多い。  この現象は、日本にだけ発生したわけではない。海底火山と南極大陸を除く3,000mを超える火山で産まれている(ポップしている)()()()。なので、3,000m級の山が無い国では、魔物は出現していない。さらに不思議なことに、魔物が(州・県)境を理解しているのか、境を越えない。異能を得られる人も、何に依存しているのか、”得られる者”と”得られない者”が発生している。条件は、判明はしていない。  魔物が出現してから。 ・火山が、ダンジョンになっている説。 ・UMAは、魔物だった説。 ・火山が、異世界への門になっている説。 ・某国の細菌兵器で獣が魔物になった説。 ・太古から政府は認識していた説。  等々・・・。が、流れた。  いろいろ言われて、それこそ、雨後の筍のように説が出ているが、立証は難しく、不可能とさえ思われている。ダンジョン専門家や、魔物は神に繋がる生物だと崇める新興宗教が産まれた。混沌とした状況を、各国政府は座して待っていたわけではない。法整備を行っているが、柔軟な対応が不可能な官僚や政府高官では、魔物や異能(スキル)が理解できずに、現状の法律で取り締まろうとした。  各国政府が後手に回る中で、唯一と言っていい希望が産まれた。  ジャパニメーションに毒された者たちが集まって、異能(スキル)を得た者たちを管理する”ギルド”を立ち上げた。登録は、任意としているが、各国政府と交渉して、ギルド証を持つものへの優遇処置を勝ち取った。ギルドに登録した武器と防具の携帯許可。異能を使って生じた被害への保証を行う。ギルドに登録して、異能を申請することで、ギルドからの仕事が届くことがあるが、受諾するのも任意となる。ギルドは、異能の情報をまとめていて、ギルドに登録した者は自由に閲覧することができた。異能には、簡単に使える物から、訓練が必要になる物まで存在している。ギルドでは、異能の訓練が行える。  異能を持った者たちは、自由意志でギルドに登録できる。メリットもデメリットも存在している。  異能が、紛争で使われてから、各国は規制に動いた。ギルドを国に取り込もうとしたが、国連が”ギルドは国には属さない”という声明を発出した。  しかし、異能が国防に有意義であるのは、誰の目にも明らかだ。  魔物が発生していない地域と発生している地域が明らかになっている。国防を理由に、発生場所を、国が軍で保護するのは当然の流れだ。  日本で言えば、3,000mを越えている火山は3箇所だ。富士山(静岡、山梨)木曽御岳山(岐阜、長野)乗鞍岳(岐阜、長野)になる。日本政府の対応は後手に回っただけではなく、何も考えていないかのような対応だった。火山が発生場所だと判明してから、半年以上経過してから、ギルドからの要請を受けて、自衛隊が3つの火山を封鎖した。しかし、そのときには、魔物の多くは4つの県に散らばってしまった。  ギルドの日本支部は、最初は東京の四谷に作られる予定だった。しかし、政治的な駆け引きを嫌った、日本支部は静岡県静岡市に本部を作った。候補は、愛知や横浜などが上がったが、ギルドは静岡市に作られた。外洋にも、岐阜にも、山梨にも、長野にも、3時間前後で移動が可能で、自衛隊の基地がある場所だというのが後押しした。実質には、土地代が安く、新幹線の停車駅が有ったのが決めてになった。ギルドのサテライトが、いろいろな場所に作られた。  魔物の生体はよく解っていない。捕らえて、観察しようとした者たちや研究所で解剖しようとした者たちは、存在したのだが、成功した者は居ない。  解っているのは、”(体液)”が紫であること、捕らえて檻に入れた瞬間に消えてしまうこと、死んだ魔物は、消えてしまう。ドロップアイテムは、極々低い確率で残される。  異能は、同じ魔物を倒しても、同じ物が得られるわけではない。一つ以上の異能が芽生える者も存在する。  ギルドが主導して、異能と科学の融合が行われた。  異能を持つ者(スキルホルダーや異能者と呼ばれる)を、見分ける方法が確立された。ギルドカードも、何度も更新された。ジャパニメーションにあるような、異世界物と呼ばれるコンテンツにあるような、ギルド機能が確立された。情報が保持される反面、異能者は管理される状況になる。 『ふぅ・・・』  ダメだ。現実は何も変わらない。”魔物”と”異能”と”ギルド”に関する情報を思い出したが、私の現状を説明できる情報は、何も思い出さない。  そもそも、私が通っていた学校では、異能者は居ないはずだ。隠れて取得した人が居るかも知れないが、ギルドから借り受けている、異能者を識別する機械(異世界物のように、魔道具と呼ばれている)が設置されていて、異能者だと判明したら最悪は退学処分になる。  現状を整理しよう。  ここは、学校だ。  私が通っている、高校だ。間違いない。周りを見る(すごく目線が下からで見えにくい)と、見覚えがある建物が見える。  今は、夏休みだ。事情があって、一部の部活以外は、活動は自粛している。学校は、静まり返っている。  3日前が登校日で、学校に来た。学校に来た時に、メッセージを受け取ったが知らないアカウントだったので無視した。昨日、同じアカウントから、私を呼び出すような言葉が書かれたメッセージをもらった。呼び出しは、私だけではなかったようだ。  どうしようか迷ったが、暇だったこともあり、人違いだろうと思った。アドレスに返事を書いても、アドレスが存在しないと言われて帰ってきてしまう。メッセージには、”秘密をバラされたくなかったら、午前8時に来て欲しい”と書かれて、場所が指定されていた。  両親も、祖父母も、兄弟姉妹も、居ない。一人で住むには、広い家に居るのは、寂しいだけではなく、気が滅入ってしまう。  いろいろな事情があり、呼び出しに応じようと思った。  実際に、この場所に、来たのは私だけだ。  それで、待ってみても誰も来なかったから、帰ろうと思った。  そう、誰も居ない家に帰ろうと思った。  間違いない。そこで、記憶が途切れている。  記憶は大丈夫だ。覚えている。  自分の名前も思い出せる。死んでしまった、両親や祖父母、兄や妹の名前も覚えている。事故で死んでしまったことも覚えている。私だけ残して死んでしまった。私は、両親と祖父母が残してくれた(財産)で生活はできる。一人で住むには広すぎる家もある。田舎町の、山の中。駅まで、自転車で20分は必要な場所だ(原付バイクが欲しい今日この頃)。今日も、駅まで自転車で移動して、電車で30分かけて移動して、駅から歩いて学校まで移動した。移動時間だけで、1時間10分だ。  現実逃避をしていても、何も変わらない。  ガラスに映るのは、私で間違いないようだ。  目は、何けど、なぜか見える。  手も足もないけど、移動はできる。  ”ぽよんぽよん”と弾む姿は、どこか愛嬌さえもある。愛玩動物だと言われても納得できる。  口が無いから、喋られないのか?ラノベ的には、思念を飛ばせるはずだ。 『はぁ・・・。なんで、スライムになってしまったの?』
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