一 ハンドトゥハンド

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「どうせ、シニアでやるつもりだから問題ないです」  一華が不貞腐れている中、佑はあげられた障害を一刀両断する。外堀が埋められていく気がして、一華は細かいことは一旦置いておくことにして佑を止める。 「いや、私はペアを組むなんて言ってないから」 「トライアウトに来たのに、どうして断るんですか?」  首を傾げる佑は、断られるなんて微塵も考えていなかったようで心底不思議そうだ。 「わざわざ年齢外で来て、断るんですか」  拒否されると悔しいのか、一華が選ばれることを歓迎していなかった者までが問い詰めてくる。佑の言うことはもっともだが、一華としてはこのトライアウトは乗り気ではなく推薦した者の顔を立てるために参加しただけだった。 「この年ですし、そろそろ辞めるつもりだったので」  年というところを強調したのは、まだ先程の遺恨があったからだ。  これで話は終わりだと一華は思っていた。けれど、リンクの向こう側からまた一人走って来た。 「ほら、やっぱり辞める気だったんだろう。辞めないと言っていたけど、俺はずっと疑っていたんだ」
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